写真を撮っているけど、これまでに撮れなかった写真があって。

それを、後悔している。4年前になくなった父の写真。撮りたいと思っていたけど、なかなか改めて撮る事ができなくて。ずっと病気だったし、だんだんと元気じゃなくなるし。大きくて強くて怖かった父が、どんどんと小さくなっていく。腹立つ事も多かったし、だめな所も多い人だったし、喧嘩も沢山したけど、大好きだったから。

ちゃんと撮ったのが、亡くなる1ヶ月前。

死んでいく父。よく撮れたと思う。もう本当に会えなくなるとわかってたから。今撮らないとその機会はもう来ない。その時は必死で撮ってた。デジタルカメラを向けるのが難しく、フィルムカメラで撮ってた。カメラを構え、画角を決めて、フォーカスを自分で合わす。そしてゆっくりとシャッターを押す。36枚撮りを撮り切るのに、1ヶ月くらいかかった。結局はフィルム2本分も撮れなくて。もう危篤、病院のICUでも撮った。お通夜、お葬式中も撮った。正直、どうにかしてたんだと思う。ちゃんと撮らないと後悔すると思った。

撮影した写真はすぐに現像に出せず。

気持ちが落ち着いてから、多分3ヶ月か4ヶ月後に現像に出した。今はフィルムカメラを現像してくれる場所も少ないから、郵送でラボに送り、2週間後くらいに手元に届く。毎日帰宅したらポストを除き、まだ届いてないか確認する。やっと届き、急いで封筒を開ける。ゆっくりと写真を見る。モノクロの写真。あ、本当にお父さん、死んだんなや。もう会えないんやな。当たり前のことを確認する。誰にでも見せる写真ではない。なんでその写真を撮ったのかもよくわからない。でも撮ってよかったと思ってる。最後の父は、それまでと違って穏やかで、静かで。写真を撮った亡くなるまでの一ヶ月は父に向き合えたと思ってる。父の手は小さく、シワシワで。最後に話をしたのは、病院に連れて行ったとき。帰りの車の中で、いなり寿司を食べるお父さんと政治家の話をした。それが最後。だんだんと記憶は鮮明ではなくなっていくけど、写真を見ると思い出せる。

父が亡くなってから、以前に撮った写真を整理していると、まだ元気なときの姿を残せてた。
これを見つけた時は嬉しくて。
自然ないつものお父さん。まだ元気な時のお父さん。
父を思い出す時は、この姿を思い出すことにしようと思う。

もし、あなたに大切な人がいるのなら、一緒に写真を撮ってください。

家族でも、恋人でも、友達でも、あなたの大切な人。
その大切な人と、喧嘩している人。
この先お互いに別々の道を進むか、死別するか。
何をどうしても、そのうち会えなくなるんです。

喧嘩なんかしないで、手を繋いで写真を撮ってください。
そして、その写真を印刷して壁に飾ってください。
写真って良いですよ。